取材協力=三井物産ロシニョール(株)、横浜市スポーツ医科学センター
新しい自分をつくり上げる
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   ケガの回復具合、順調そうですね。

   「そうですね。4月4日に手術した時点では10月頭にスキー板を履き始めるというのが、当初の予定だったのですが、ドクターとトレーナー、あとマッサーと相談して8月14日にはザウスで滑ることもできましたからね。その結果、雪上でも問題なくいけることがわかったので、今回の9月の遠征には最初から参加できることになりました」。

   その回復の早さに皆川さん自身、驚きのようなものは感じていますか。

   「幸いなことにそれほどリハビリが大変だという実感もないし、膝の炎症もほとんどない。俺ってすごいなとは思わないけど、でもある意味でびっくりはしていますね。手術後2週間くらいは『もう駄目だ』と思うくらい膝は曲がらなかったし、何よりもすごく痛かった。その頃のことを考えると、うん、本当にかなり順調に来ていますよね」。

   いままで自由に動かせたものが、ケガ、手術をしたことによって自由ではなくなったわけですから、初めて体験したことがたくさんあったと思います。そうした状況のなかで、今まで、またこれから復帰するプロセスに対する焦りや不安はありませんか。

   「今までもこれからについても焦りや不安はまったくないですね。いつもの僕なら何かに駆られるかのように焦ることが多いのですが、今回は『焦ってもしょうがないや、別にいいや、ゆっくりやろう』と、当たり前のように自然に考えられたことが大きかったように思います」。

   それは、ケガをしたという状況に対する一種の諦めのような、良い意味で開き直っている、という心境なのでしょうか。

   「そんな感じかもしれませんね。復帰するのは当たり前のことだと信じているし、早く復帰しなければという焦りもない。ケガをして手術もして不安や焦りを抱える人が多いけど、不思議と僕はそういうのがまったくなかった。こればかりは、自分でもなぜそう思えたのかわからないのですが、今、自分がある状況も普通に納得して消化できたし、これからのことに対してもすぱっと気持ちを切りかえることができましたね。諦めることも妥協することも簡単。けれどまた挑戦できる環境も可能性もあるのだから、自分の意志を成し遂げたい。今はそれだけを考えています」。

   もう少し詳しく、現在の身体の状況についておうかがいしたいのですが、去年の同じ時期の体力に比べて何パーセントくらいまで戻ってきていると思いますか。また仮に“リハビリ”はおもにケガの治療を目的としたもの、“トレーニング”はプラスの体力をつける目的のもの、というふうに分けた場合、いま皆川さんが行なっているのは、どちらなのでしょうか。

 
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ケガした左脚も含め、かなり以前からサッカーで遊ぶことはできたという
 「もう現段階でケガのことはほとんど気にすることなく身体を動かせる状態で、少なくとも室内でできるトレーニングに関して言えばすべて普通にできます。数値的に戻っていない要素もありますけど、たとえば血中乳酸値濃度などはこれまでで一番良い数値を記録していますし、総合的に見れば昨年の今の状態と何ら変わらない状態にあります。もちろん、今、右膝にある靭帯はもともとそこにあったものではないので、速い運動に対する反応力やバランスという点で、違和感というほどではないけどまだ完全でないことはたしかです。わかりやすく言えば、まだ移植した腱がその周辺と馴染みきれていないので、瞬発的な力などに対しては今までのように瞬時に言うことを聞いてくれないような感じですね。ですから厳密には手術した膝をケアしながらのトレーニングということになりますが、気持ちの面で言えば、もう完全に身体づくりを目的としたトレーニングという認識でやっています。とにかく僕が考えているのは、今できること、やるべきことをひとつずつ確実に消化していくこと。最終的にめざすところは変わらないわけですし、そこに到達するために必要なものもわかっているつもりです。ケガをして手術して、身体の一部がほんの少し変わった。これはマイナスでも何でもなく、それならばそれで違う、新しい自分をつくりあげて戦えばいい。ただそれだけのことです」。

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