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【トリノ日記一覧】
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■編集部員Tt・Iの2006トリノ五輪取材日記 VOL.13 (最終回)
 
イタリア・トリノより (2006/02/25)
メダルには届かずとも、過去最強の力を見せた日本チーム
2月25日 男子スラローム

 いよいよこの日がやってきました。猪谷千春が銀メダルを獲得してから約50年。半世紀ぶりに日本アルペン界にメダルがもたらされるのか。そして、ソルトレイクの惨敗から4年。その間にいかに日本チームが世界と伍するだけの力をつけてきたのか。その総決算と言える、男子スラロームが行なわれたのです。

 前日までの天候を引きずって朝から雪は降りやまず、降雪のなかでのレースを覚悟しましたが、1本目のスタート時間が迫るにつれ雪足は弱まり、青空ものぞくなか1本目がスタート。2本目のナイタースラロームの間も雪はチラチラと降り続きましたが、レースの運営には支障のない、良好なコンディションのなか、レースは行なわれました。

 結果だけを先に書けば、優勝したのはベンジャミン・ライヒ。2本ともベストタイムをそろえる完勝で、ジャイアント・スラロームに続く、ふたつ目の金メダル獲得です。さらに、2位、3位にラインフリード・ヘルブスト、ライナー・シェーンフェルダーが入り、メダルをオーストリアが独占しました。恐るべきはオーストリアのチーム力。今大会ではアルペン競技だけで14ものメダルを獲得し、あらためてその強さを見せつけてくれました。

男子スラローム会場には日本からも多くのファンが駆けつけた 表彰台を独占したオーストリア。皆川賢太郎選手がこの一角を崩すはずだったのですが…

 しかし、日本チームもアルペン競技最後の種目を舞台に、それぞれが印象深い戦いぶりを見せてくれました。

わずか100分3秒差でメダルを逃した皆川賢太郎選手だけどその滑りは日本の多くのファンの勇気づけ感動させたはずだ 皆川賢太郎――1本目、11番スタートからトップのライヒに0.07秒差の3位につける快走を見せてくれます。3位という順位、0.07秒というタイム差、いずれも自己最高。このオリンピックの舞台で、最高のパフォーマンスを体現します。多くの選手がコースアウトしたトリッキーなセットを、果敢に攻めきっての結果です。そして、悲願のメダル獲得をかけて臨んだ2本目。必死さが伝わってくるような滑りでゴールラインを切りますが、その時点で3位。続くカレ・パランダー (フィンランド) が旗門不通過で失格になり、まだ可能性を残しますが、最後のライヒがゴールするとメダル獲得の夢は潰えました。アルペン競技では猪谷千春以来の入賞となる4位。もちろんメダル獲得まで手をかけながら届かなかった悔しさはあると思います。しかし、たび重なるケガや不運から這い上がって、世界最高レベルまでふたたび舞い戻った皆川選手のこの活躍は、充分なものだったのではないでしょうか。本人も 「メダルを取りたかった。でも、スタートでこの舞台に立てる幸せを感じた。悔しさもあるけど、うれしさもある、すばらしいオリンピックだった」 と語り、満足げな表情を見せてくれました。

2本目スタート直後に片反してコースアウトしてしまった佐々木明。本人の悔しい思いは計り仕切れないが「チームがよかったのでわりとハッピー」とレース後笑顔で語った 佐々木明――1本目スタートの午後3時は光のコントラストがもっともフラットになり、佐々木選手にとってポールが見えにくい状態だったのでしょう。それでも10番スタートで登場してトップとの差は1秒ジャストの8位の位置にこらえます。2本目での逆転にすべてを賭けますが、スタート直後にポールをまたいでしまいコースアウト。本人も 「ガンガン攻めることしか考えなかった。だから、あの結果は仕方がない」 と言うように、ポールの根元をギリギリまでねらった、その代償なのでしょう。今までの日本チームならばエースひとりに、その重責の多くが集まってしまっていました。しかし、この日は違います。佐々木選手がコースアウトしても、皆川選手や湯浅選手がシングルランクに入賞。佐々木選手の 「今の日本チームは俺だけじゃない。俺が駄目でも次から次へとどんどん出てくる」 という言葉、そして皆川選手とゴールで握手する佐々木選手の姿が、今の日本チームの強さを現わしているでしょう。もちろん悔しさは大きいと思います。この悔しさがきっと佐々木選手をさらに強くすると信じてやみません。

初出場の五輪の舞台で7位入賞という歴史に残る快走を見せてくれた湯浅直樹。4年後のバンクーバー五輪でのメダル獲得を力強く宣言!! 湯浅直樹――まちがいなく今日のレースを盛り上げた選手のひとりと言えます。1本目を1.39秒差の17位につけると、2本目を猛然とアタック。バランスを大きく崩しながらもスキー板を下に向け続け、ゴールした時点で2位以下に1秒以上の差をつけてゴール。20番スタートのイヴィツァ・コスタリッチ (クロアチア) に抜かれるまでトップに立ち続けます。結果的に順位を7位まで上げて、みごとシングルランク入賞。日本チームの強さは湯浅選手のこのオリンピックという大舞台でのパフォーマンスによって、世界のアルペンファンに強く印象付けられたと言えるでしょう。佐々木選手も皆川選手も、「今日は湯浅が一番がんばった」 と認めるこの活躍。それでも湯浅選手は 「悔しい」 と言います。小さい頃から一貫された、「つねに世界の一番になることをめざしている」 彼の姿勢に、今後への頼もしさを強く感じます。




 残念ながら結果を残すことはできなかった生田康宏選手がこの経験はかならず今後の活動に生きてくるはずだ生田康宏――26歳にして初めてつかんだオリンピック代表の座。それだけに賭ける思いも大きかったのでしょう。その思いが彼本来の身体能力にあふれるスムースな動きを奪ってしまったのか、1本目、スタートからうまくリズムが噛み合わず、コース中盤で大きくコースアウト。しかし、登り返して完走しようとする姿にゴールの観客から拍手が起こります。出場選手中、最後のスタートとなった2本目は、「1本でも自分が納得できる滑りをしたかった」 という思いが伝わってくるような滑りを見せてくれました。悔しさを滲ませた表情で、「なんとしても上の3人に追いつきたい」 と語るその言葉に、さらなる成長を期待してしまいます。

 アルペン競技では半世紀ぶりの入賞。日本アルペン史上初のダブル入賞。とはいってもメダル獲得という目標には届かなかった。これを "勝利" もしくは "成功" と言ってはいけないでしょう。しかし、日本がチームとして、世界と肩を並べて戦うことができる力を示した結果とは確実に言うことはできると思います。たしかに今回のオリンピックはこの4年間の総決算という意味を大きく持っていましたが、今年もまだシーズンは続きます。そして、来シーズン以降のワールドカップ戦線。そこで日本チームがさらに大きな飛躍を見せるための大きな布石となったのではないでしょうか。皆さんも今後への大きな期待を含めて、今は日本アルペンチームに大きな拍手を送ってもらいたいと思います。

 アルペン競技はこれで全種目を終え、大会も閉会式を迎えました。約3週間にわたってお届けしたトリノ・オリンピックレポート、いかがだったでしょうか。月刊スキージャーナル本誌でたっぷりと詳報をお届けしたいと思うので、楽しみにしていただきたいと思います。男子SLのリザルトはこちら≫



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