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昨年の技術選で、並みいる強豪につけ入る隙を見せず、参戦2年目にして初の栄冠を手にした柏木義之。大会前は“注目の新人”のひとりにすぎなかった柏木だが、終わってみれば話題を独り占め。3連覇をねらった粟野利信も、質の高いカービングターンを武器に初優勝をねらった佐藤久哉や宮下征樹も、予選から高得点を連発する柏木の勢いを止めることはできなかった。
圧倒的とも言える内容で勝利を手にした柏木だが、なかでも圧巻だったのは、準決勝の「大まわり・急斜面・整地・規制」。誰よりも早く雪面をとらえ、それと同時にエッジングに入っていくダイナミックなカービングターンは、新時代の到来を予感させるに充分な滑りだった。
そんな予感は、地区予選で早くも現実のものとなった。1月31日から2月4日までの5日間、八方尾根で開催された甲信越予選。現役のデモンストレーターをはじめ、宮下征樹ら強豪選手がひしめく全国屈指の激戦区で、柏木はいとも簡単に勝利を収めてしまったのである。しかも、明らかなミスを犯した「小まわり・急斜面・不整地・フリー」を除けば、ほかの種目はすべて種目別1位か2位という圧倒的な内容。総合得点でも2位の渡辺一樹に19点、3位の宮下に29点の大差をつけて、王者健在を強烈に印象づけた。
最大の目標である2連覇に向けて、最高のスタートを切った柏木だが、本番に向けてまったく不安がないかと言えば、そうとも言えないようだ。
「去年は、自分でもインパクトのある滑りができたと思っているんです。誰にも真似できない、他の選手とはちょっと違った滑りができた。だから、昨年の大会は結果はもちろんですが、内容にもすごく満足しているんです。でも、今年はみんながそういう目で見ているから、自分としては100狽フ滑りをしたときでも、『なんだあれぐらいしか滑れなかったのか』とか、『ちょっと抑えているのかな』とか思われてしまう。それがすごく悔しいし、最近プレッシャーになってきました。順位へのこだわりはそんなにありませんが、去年のイメージで見られるのがちょっとつらいですね。それから、今回の予選会のように、自分の感触以上に評価されてしまうのも怖いです。たとえば、中斜面の種目はまったく思いどおりに滑れなかったのに、あれだけ点数をもらってしまった。これだけ評価されてしまうと、昨年のチャンピオンということだけで点数をもらっているんじゃないかと、不安になりますね」。
たしかに点数は出ている。自分の滑りに自信がないわけでもない。しかし、普通に滑っただけでは、周囲は納得してくれない。また逆に、自分の予想を上まわる評価を受けることもある。自分の感覚と評価の微妙なズレに、柏木は明らかに戸惑いを見せていた。
そしてもうひとつ、柏木が非常にナーバスになっていたのが、八方尾根の雪質とバーン状況だ。予選期間中は、天候に恵まれたこともあって、スタート順が遅い選手になると、白馬特有の軟らかい雪に苦戦するシーンがよく見られた。これは柏木も例外ではなく、刻一刻と変化する雪質に、うまく対応することに苦しんでいたようだ。
「今年の技術選は条件がむずかしくなると言われているようですが、予選会を滑った印象としては、もっとむずかしくなってほしいというのが本音ですね。雪ももっと硬いほうがいい。今回ぐらい軟らかい雪だと、滑っていて調子が狂ってしまうんですよ。だから、本番ではガチガチにしてもらいたいですね。そのほうが技術の差を出しやすいですから。条件がむずかしくなればなるほど、自分の良いところが引き出せると思っているので、そのへんをどんどんアピールしていきたいと思います」。
本人にしてみれば手放しで喜べない勝利かもしれないが、去年までとは一変した周囲の目、そして決して得意とは言えない条件の中で成績を残したことは、昨年の優勝を経て、柏木がひとまわり大きなスキーヤーに成長した証と言えるだろう。
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