7月11日に行なわれた(財)全日本スキー連盟理事会で、競技本部長の村里敏彰、アルペン部長の山中茂という新しい強化体制のもと、02/03シーズンのアルペン・ナショナルチームのメンバーが発表された。実質的には、すでに暫定メンバーとして一部の活動が始まっていたのだが、この日の理事会承認を受けて、正式なスタートとなったわけである。
まずチーム編成だが、もっとも大きな変更は、男子の高速系チームが廃止されたことである。長野オリンピック以降、富井剛志、滝下靖之を中心に、吉岡大輔、星野秀太ら若手選手を加えて構成されていたが、今回のチーム改変にあたって、現状では世界レベルで戦える力がないと判断された。98/99シーズンには、滝下がヨーロッパカップのダウンヒルチャンピオンになるなど、一時は大きな成果を挙げていただけに残念な決定である。富井の引退後は、エースとしてこのチームを牽引してきた滝下も持病の腰痛に悩まされ、最近2シーズンはほとんど満足のいく滑りができなかった。また星野、吉岡のふたりは世界の厚い壁を乗り越えるには力不足が否めず、ナショナルチームに残るだけのポイントを獲得することができなかった。
チーム力がものをいう高速系種目に、明らかに見劣りのする小規模な体制で挑んできた日本のダウンヒルチーム。富井澄博、片桐幹雄、千葉信哉、相原博之、そして富井、滝下と個性豊かな選手たちが世界への挑戦を続けてきた日本のダウンヒルチームの明かりは、ひとまず消えることになった。
一方、男子のスラロームはこれまで同様、A、Bの2チーム体制。ワールドカップを中心に転戦するAチームは、皆川賢太郎、木村公宣、佐々木明の3人で構成される。8シーズンにわたってこのチームの指揮をとってきた重吉武志チーフコーチにかわって、今季からはオーストリア人のゲオルグ・ヘルリーゲルがチーフコーチに就任する。彼はかつてオーストリアを代表するスキー教師としてしばしば来日。アルペン王国の技術を紹介してきた実績があり、日本ではこれまでむしろ基礎スキーヤーの間での知名度が高かった。昨シーズンまではスイスのジュニアチームを担当し、レーシングコーチとしてのキャリアを積んできた。これまでの日本チームに欠けていたと言われる「高いレベルで技術を教えられるコーチ」として、彼のコーチングには期待が集まる。来年2月にはスイス・サンモリッツでアルペンスキー世界選手権大会が行なわれるが、Aチームの3人に関しては、ワールドカップとともにこの大会での上位入賞がとりあえずの目標となるだろう。昨シーズンの沈滞した雰囲気を吹き飛ばし、ふたたび上昇気流に乗りたいところである。
Bチームは、おもにFISレースとヨーロッパカップを中心にまわりながら、FISポイントの向上をめざすチーム。チーフコーチは、ボジョー・ヤックリンから同じスロヴェニア人のドゥザン・ブラジッチに交代した。選手は従来からのメンバー、岡田利修、生田康宏、湯浅直樹の3人に、今季は3人の新顔が加わった。横田昇平と梶悠亮は、ともに大学生で、ジュニアチームから順調にシニアに昇格。また大瀧徹也は、ジュニア時代から4年ぶりのナショナルチーム復帰である。大瀧と横田は、所属するハートチームのヨーロッパ遠征や、ファーイーストカップでの成績によってチーム入りを果たした。一方、梶は国内レースで着実にFISポイントを上げ、ジュニア世界選手権の代表にも選ばれた。このところ、Bチームは、あまり目立った成績を残していなかっただけに、彼らの活躍が起爆剤となってほしい。
そのBチームにあって、もっとも注目されるのが湯浅直樹。まだ荒削りながら、思い切りの良い突っ込みで勝負するのが魅力のレーサーだ。昨シーズン、すでにヨーロッパカップで入賞を記録。ほぼ順調に世界への階段を駆け上がっている。課題は、やはり完走率。持ち味である思い切りの良さを保ちながら、いかにゴールまでたどり着くか。ヨーロッパの厳しいレースでもまれることで、安定感を身につけてほしい。
また、今シーズンも引き続きペーター・プロディンガーに率いられる女子チームには、広井法代、柏木久美子の両エースに、滝下樹里、湯本浩美、梅原玲奈の3人の学生レーサーが加わる。この3人は、最後までナショナルチーム入りの当落線上にいたため、締め切りの関係上、左ページのプロフィールには掲載できなかった。滝下はスラロームの、梅原はジャイアント・スラロームの全日本選手権タイトルを獲得。ウェイティングながら、ぎりぎりでチーム入りを果たした。女子は1チーム編成だが、すでにワールドカップで入賞経験を持つ広井、柏木とでは力の差が大きい。シーズン中は、場合によっては、ふたつに分かれてレースを転戦するという展開になりそうだ。
(2002年月刊スキージャーナル9月号より)