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終盤戦 男子スラローム第9戦 02/15 St.Anton(AUT)
| B・ミラー、2年ぶりのスラローム優勝。 |
| M・マットも復活で、世界選手権の興奮再現
| 朝のうち、スラロームコースは深い霧に覆われていた。そのため、視界が極端に悪く、2001年世界選手権の際に設置された夜間照明が点灯。夜でもないのにライトに照らされた不思議な雰囲気のなか、午前10時、スラローム第9戦は開始された。そして、1番スタートのベンジャミン・ライヒがいきなり失格となる波乱の幕開け。ライヒは、スタート直後から滑りが落ち着かず、リズムをつかみきれないまま、コース終盤にさしかかる。短い急斜面の中ほどで内スキーがポールをまたぐミス。あわてて登り返しコースに復帰したものの、実際にまたいだのは、さらにもうひとつ上の旗門だった。大きくタイムをロスしながらゴールはしたが、当然ながら旗門不通過で、2本目に進むことはできなかった。スラロームの種目別をライナー・シェーンフェルダー、カレ・パランダーと争い、さらに総合のタイトル争いでも2位につけるライヒにとって、文字通り痛恨のミスとなった。
1本目のベストタイムはボディ・ミラーがマークした。この日のゼッケンは4番。まだそれほど荒れていないコースを、会心の滑りでカバーして、シュラドミングに続き、今季2度目の1本目トップに立った。シーズン前半、失敗続きで悩んでいた頃とは明らかに違う滑りだった。重心が下がり、スキー板のコントロールに苦しみ、いつ飛び出すか不安で仕方がなかった頃の不安定さは、現在の彼のスラロームに存在しない。このところ登り調子のトゥルース・オヴェ・カールセン
(ノルウェー) が0秒17差でつけたのが唯一互角に戦えた相手で、けっして悪い滑りではなかったカレ・パランダーも、0秒57の差を失った。 佐々木明は、すばらしい滑りを見せた。17番スタートの彼は、スタートからゴールまでまったく急ぐことなく悠々と滑りきった。ラインは充分に高く、アタックモードに入ったときの深く内側に倒れる過激なターンも完全に封印。そんな余裕たっぷりの滑りにも関わらず、スキー板は快調に走り8位のタイムでゴール。ミラーとのタイム差は0秒86だった。
2本目、雪は緩んだ。昼頃から霧が晴れ、春を思わせる太陽が顔を出すと、気温はぐんぐんと上昇。週の半ばに積もった大量の湿雪のために下地の軟らかいコースは、持ちこたえることができなかった。レースの行方は、荒れたコースをいかに攻略するかという点にもかかってきた。
そんな2本目で主役となったのは、マリオ・マットである。サンアントン近郊の出身、ケガによる2シーズンのブランクから復帰途上の彼にとって、これは非常に重要なレースであった。2001年の世界選手権でスラロームの金メダルを獲得し、一躍国民的なスターとなったこのサンアントンで、何とか完全復帰の足がかりをつかみたい。そう彼は強く望んで、このレースを戦ったのである。1本目は18位とやや出遅れたが、2本目に集中力を高めてスタートした彼の滑りは、世界選手権チャンピオンの名にふさわしいものだった。最初の急斜面の入り口、2ターンに渡ってバランスを崩したが、ぎりぎりのところで踏みとどまった。この遅れを急斜面を攻撃的に滑ることで挽回したマットは、コースの半ば過ぎから完全にリズムに乗り、ベストタイムでゴール。1本目3位のパランダーに抜かれるまでトップの座を守った。このレースでマットは3位を確保し、01/02シーズンのクラニスカ・ゴラ以来2年ぶりの表彰台に登った。
佐々木も2本目のコースに悩まされたひとりだった。23番目のスタートと、不利な条件での戦いとなった彼は、ほとんどミスのない滑りをしたように見えた。しかし、タイムは予想外に伸びない。最初の急斜面は快調にこなし、マットとの差を広げたのだが、中間付近の緩斜面でまったくスキー板が走らなかった。それを感じたのか、ゴール前の彼はもがくように先を急いだが、ゴールした時点で9位。1本目の好調さからすれば、当然ベストタイムでゴールすることをイメージしていたはずで、タイムを確認したときの彼には信じられないものを見たという表情が浮かんでいた。結局彼は13位にまで順位を下げ、不機嫌なまま会場を立ち去った。
そんなむずかしい状況のなか、ボディ・ミラーは冷静だった。同じく1本目トップに立ったシュラドミングでは、先に滑ったイヴィツァ・コスタリッチが転倒による負傷。そのためスタート台に立ったまま長いブレイクを余儀なくされ、集中力を失ったが、この日は最後まで乱れなかった。強靭な気持ちと完璧な滑り。この日の彼に負ける要素はなかった。リードを守りきるどころか、この時点でトップに立っていたパランダーに対するタイム差を、逆に広げてベストタイムのゴール。長かったスラロームの不調から脱し、完全復活を強く印象づけた。これで、総合トップのヘルマン・マイヤーとの得点差は70点となり、ふたたび彼にも総合優勝の可能性が見えてきた。
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