SKI CHANNEL HEADER
SKI CHANNEL
アルペンサイトTOP 02-03 Alpine W-CUP 取材レポート
 ≪TOPに戻る
【2004年SJ5月号】
終盤戦 「勝利の女神 はどこにいる?」
男子GS第6戦
男子SL第8戦
男子DH第10戦
男子SL第9戦
男子GS第7戦
男子SL第10戦
〔SJマンスリーウォッチ 12〕
佐々木明

 他のレポートはこちらから
2004年SJ1月号
2004年SJ2月号
2004年SJ3月号
2004年SJ4月号
2004年SJ6月号

終盤戦
男子ダウンヒル第10戦 02/14 St.Anton(AUT)

ヘルマン・マイヤー3年越しの雪辱。
会心の滑りでジラルデリと並ぶ通算46勝目

ヘルマン・マイヤー 今回のワールドカップは、多くの選手にとって、2001年サンアントン世界選手権の思いを投影するレースとなった。あのとき失敗をした選手は3年越しの雪辱を誓い、栄光をつかんだ選手はその再現をめざす。だが、より強いモティベーションで今年のレースに臨んだのは、世界選手権で不本意な成績に終わった選手だろう。そしてその筆頭は、おそらくヘルマン・マイヤーである。

 00/01シーズンは、ヘルマンが2位シュテファン・エベルハルターにダブルスコア近い得点差をつけ、圧倒的な強さでワールドカップ総合優勝を果たした年。世界選手権でも当然優勝候補の筆頭に挙げられていた。しかし、彼がこのとき残した成績はダウンヒル2位、スーパーG3位、GS4位。期待された金メダルはついにひとつも手にすることはできなかったのだ。とくに絶対的な優勝候補と考えられていたダウンヒルでの2位は、彼に大きな失望を与えた。このとき勝ったのは、チームメイトのハンネス・トリンクルだったが、いつもは地味な存在のトリンクルに負けたことで、ヘルマンは、一転マスメディアから叩かれることになった。

 そんな苦い経験があるだけに、ヘルマンがこのレースにかける意気込みは尋常ではなかった。トレーニングランのときから集中力を高め、いつにもまして慎重にマテリアルの準備を行なった。

 このコースには、多くの勝負どころがあった。最初のポイントは、2個目のジャンプとそれに続くターンの連続する区間だ。ここは夏道を跳び越すために雪が盛られたジャンプで、着地してすぐに右にカーブしなければならない。飛距離が出すぎると、ターンの進入が苦しくなり、その後の技術区間でのスピードが大幅に遅くなる。ヘルマンは、空中での姿勢は多少乱れたものの、必要最小限の飛距離に抑え、続くターンの連続で理想のラインをトレースした。ここで大きなアドバンテージを獲得した彼は、コース半ばを快調に飛ばした。

 この週のサンアントンは、週の半ばに湿ったドカ雪が積もった後、気温が上昇していた。太陽も顔を出したために、コースは著しく軟化。ライン上にはダウンヒルではめずらしいほど深い溝が刻まれ、それに滑りを乱される選手が続出した。とくに問題となったのは、最後の大斜面への進入である。ここは、 「アイスフォール」 と名づけられた超急斜面をまっさかさまに滑り降りた後の急激な右ターンで、強烈なGに耐えながら、いかにラインを高くキープするかで、最後の斜面のスピードが決まってくる。27番スタートのヘルマンが滑る頃には、コースは激しく荒れていたはずだが、ここでも彼の滑りは乱れなかった。結果的には、このターンがヘルマンに勝利をもたらしたと言ってもいいだろう。彼は、それまでトップだった、オーストリアの新鋭ヨハン・グルーガーを0秒37上まわり、トップに立った。

 そのヘルマンを激しく追い上げたのは、30番スタート、ダウンヒルの種目別リーダーのシュテファン・エベルハルターである。彼は、合計5カ所に設けられた中間計時のうち第3計時までヘルマンを上まわっていた。しかし、問題の右ターンで、スキー板が叩かれたのか、ラインは大きくふくらんでしまった。そのため最終区間でのスピードが伸びず、ヘルマンの逆転を許すことになった。

 ヘルマンにとって、この勝利はワールドカップ通算46勝目。マーク・ジラルデリと並ぶ歴代3位の勝利数である。
「この勝利を長い間、待ち望んでいた。このコースにはやはり特別な思いがあり、何としても勝ちたかった。今日は、今季のダウンヒルでもっともリスクを負って滑った。ミスはいくつかあったが、他の選手と比べてスピードのロスが少なかったことが勝てた原因だろう」 と喜びを語った。

 そのヘルマンを追いかけ、総合優勝をめざすボディ・ミラーも、2001年の仇を取った選手のひとりである。ボディは世界選手権のコンビ・ダウンヒルで激しく転倒。膝の靭帯を痛めて残りのシーズンを棒に振った苦い経験を持つ。だが、3年ぶりにめぐってきた雪辱のチャンスに、彼は思いをぶつけた。前半はミスが目立つ滑りだったが、クラッシュした悪夢の箇所を含むコース後半でうまく立て直し、今季のダウンヒルでは自己最高の8位に食い込んだ。

 対照的に、2001年のダウンヒル・チャンピオン、ハンネス・トリンクルはひっそりと敗退していった。今季さっぱり調子の上がらないトリンクルは、思い出のコースで栄光の再現をめざし、そのための秘策として2個目のジャンプをつぶし、次の右ターンをより高い位置からねらう作戦を選択した。他の選手が高く飛び出すこの箇所を彼は (他にはパトリック・イェルビンが同じ作戦をとっていたが)、スキー板をほとんど雪面から浮かさずに通過したのである。ねらいは成功したかに見えたが、その直後、急激なターンに耐えかねたかのように転倒し、途中棄権に終わっている。

www.skichannel.ne.jp
<<BACK    TOP▲