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03/04 Audi FIS AlpineSki Worldcup クラシック・シリーズ
冬の祝祭
年が替わると、ヨーロッパの冬は本番を迎え、毎日陰鬱な天候が続く。雪の降るのが遅かったこの冬も、さすがに1月の声を聞くと日を追うごとに積雪量が増えていった。寒く、暗く長い冬。雪に降り込められる忍従の時期が、しばらくの間続くのだ。しかしアルプス諸国の人々には、そんな厳しい冬をやり過ごす最高の娯楽として、ワールドカップがある。テレビ観戦を楽しみ、新聞で詳細を知り、そして友とレースを語り合う。日常のごく当たり前の光景のなかに深く溶け込んでいる、アルペンスキーのワールドカップがある。
1月は、ワールドカップに対する注目度がシーズンのなかでもっとも高くなる時期でもある。毎週のようにレースがスケジュールされ、そのすべてがテレビで放送される。今、調子の波に乗る選手は誰か。これから成長しそうな若手はいるか。ケガで苦しんでいるあの選手は、いつ復帰するのか。そんな人々の興味のなかで、週末ごとに多くのレースが消化されていく。
取材を通して、ヨーロッパで行なわれるワールドカップ・レースに間近に接すると、このイベントがいかに人々の生活に密接に結びついているかを実感する。会場となる町や村の人々にとって、ワールドカップは年に1度、あるいは2年に1度のお祭りなのだ。長い間待ちわびた末に、わずか数日間だけ町を賑わす祝祭。心躍り、華やかで、だけど終わってしまえば少し悲しい冬の祭り。それがヨーロッパにおけるワールドカップなのである。
もちろん、すべての人がレースに詳しいわけではない。 「名前を知っている選手は、ヘルマン・マイヤーとアルベルト・トンバ。あれ、トンバはもう引退したんだっけかな??」
だが、そんな程度の知識しかない人でも、やっぱりワールドカップがやってくるのは、楽しみなのだ。だから、大会の始まる何日も前から町はどことなく落ち着かず、選手がやってくる頃には、人々の気持ちもしだいに華やいでくる。そしてレース当日。町は各国から観戦にやってきたファンであふれる。狭い通りの両側には、食べ物や飲み物、あるいは観戦グッズを売る屋台が立ち並び、どこからかファンの応援歌も聞こえてくる。早くもアルコールがまわり、レース開始を待たずに撃沈する人も数知れず。とにかくアルプスの山間の小さな町は、レースをめぐる期待と興奮、熱気とで騒然となるのだ。
ただし、正確を期すために付け加えるならば、観客の絶対数は、他のメジャーなスポーツイベントに比べてそれほど多いわけではない。平均すればおそらく1万人には届かないだろうし、多いと言われるキッツビューエルのダウンヒルでも5万人程度。このハーネンカム大会の観客数はしばしば10万人超と表現されることがあるが、それは、3日間
(今季は代替レースを含めて4日間) のトータルであり、1度に10万人が訪れるわけではない。しかし、その会場が、大都市からは遠く離れた辺鄙極まりないスキー場であることを考えると、数字だけでは測りきれない人気の重みを感じざるを得ない。仕事の帰りにちょっと立ち寄れるような気軽な場所でもなければ、雪や風をしのぐ屋根があるわけでもなく、さらに言えば、自分の応援する選手が一瞬のうちにコースアウトしていく可能性だって少なくないのだ。そんなことを重々承知で、それでも長い時間と多大なエネルギーを使って会場にやってくるファンたちのエネルギーには、ただただ敬服するしかない。
1月はまた、いわゆるクラシックレースの季節でもある。ウェンゲンで行なわれるラウバーホルン大会、キッツビューエルで行なわれるハーネンカム大会。さらに今季はシャモニを舞台に行なわれるアールベルク・カンダハー大会。37年というワールドカップの歴史よりはるかに古い起源のこれらの大会は、クラシックレースとして、特別の伝統と格式を持つ。そして、それゆえにすべての選手が勝利を願い、勝者には格別の尊敬が払われる。この3つの大会のすべてが、レースに対する注目度のもっとも高い1月に行なわれるのは、けっして偶然ではないのである。
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