≪TOPに戻る
他のレポートはこちらから
|
クラシック・シリーズ 〔TOPICS 1〕 シュテファン・エベルハルター
怒りのドーピング
シャモニのDHで優勝したシュテファン・エベルハルター。今季初の優勝だったというのに、記者会見場に入ってきた彼はカリカリしていた。ここはコースとプレスセンターが遠く離れているため、車で移動するのだが、レース後の大渋滞にはまり、エベルハルターを乗せた車がなかなか進まなかったからだ。しかもそのとき、彼は猛烈な尿意を我慢していた。入賞者には尿採取によるドーピング検査が義務づけられており、それが終わるまでトイレに行きたくてもいけないのだ。やっとのことで会見場に到着したものの、検査の会場が見つからない。これに切れたエベルハルターは持っていた手袋をバーンと投げつけ
「くそっ!」 とひと言。それでも、何とか検査は終了し、会見が始まると、彼の表情は一転にこやかとなり、開口一番 「久しぶりのAK大会だけど、シャモニの運営は最高だった。ありがとう」。多くの人は気づかなかったが、彼としては、精一杯の皮肉だったのだろう。
〔TOPICS 2〕 ボディ・ミラー
夕方定期便
夕方になると、ボディ・ミラーがプレスセンターにやってくる。手には、アップルのパワーブックが。そう、彼はインターネットでメールのチェックをしにやってくるのだ。ここウェンゲンでは、プレスセンターの電話回線は無料。したがって電話だろうとメールだろうと料金を気にせずに、かけ放題つなぎ放題だ。それをかぎつけた選手たち
(とくにヨーロッパからだと遠距離通話となるアメリカチーム) は、しばしばプレスセンターを訪れる。2年前には、あまりに多くの選手がくるので、張り紙が出されたこともあるほどだ。
「この電話は報道専用なので午後6時までは選手の使用禁止」。全面禁止にしないのが偉いところだが、それを律儀に守るボディも偉い。彼は、4年前、まだほとんど無名だった頃からの常連で、それだけにけっこうややこしい設定も軽くこなす。でも、今やスーパースターとなったボディならば、別に通話料を節約しなくてもいいと思うのだが。
〔TOPICS 3〕 パウル・アッコラ&フェリックス・ノイロイター
36歳 vs 19歳
ワールドカップ最年長は、92年度の総合チャンピオン、パウル・アッコラ。2月20日で彼は37歳となる。愛称はパウリー。本人は頑固一徹、愛想のかけらもないのだが、ファンは親しみをこめてパウリーと呼ぶ。昨シーズンは、ケガのためにレースに出場できず、サンモリッツ世界選手権にもゲストとして招かれただけだった。だが、今季は久々に好調。DHとSGで円熟した滑りを見せている。キッツビューエルのダウンヒルでは39番スタートで13位となり、うれし恥ずかしのウィンスターを獲得した。一方、翌日のスラロームでウィンスターに輝いたのは、19歳のフェリックス・ノイロイター。父は名スラローマー、クリスチャン・ノイロイターで、母はインスブルック五輪の2冠王、ロジ・ミッターマイヤーだ。血統の良さはルックスにも充分現われている。36歳と19歳。その対照はあまりに鮮やかだが、ふたりを並べたことに意味はない。ただ、アルペンスキーとは懐の深いスポーツだなぁと思うばかりである。
〔TOPICS 4〕 イヴィツァ・コスタリッチ&ライナー・シェーンフェルダー
表彰式はかくし芸大会
ワールドカップの表彰式で何度か演奏したこともあるから、イヴィツァ・コスタリッチのギターのうまさはよく知られている。一方、ライナー・シェーンフェルダー。オーストリアではCDもリリースしているボーカリストである。このふたりが今年のウェンゲンSLでは2位、3位に入った。表彰式ではふたりの夢の競演が期待されたが、さすがはエンターテイナー。みごとに期待に応えてくれた。イヴィツァがおなじみC・ベリーの
「ジョニー・ビー・グッド」で華麗なギタープレイを披露すれば、ライナーは、E・プレスリーの 「ブルー・スウェード・シューズ」を朗々と歌いあげる。もちろん観客は大喜びだが、優勝したベンジャミン・ライヒは音楽が大の苦手
(らしい) 。そんなわけで、仕方なしに彼が手にしているのが、タンバリン。困ったような顔で打ち鳴らすその姿はとても可愛かったが、かすかに聞こえてくる音のほうは、少しリズムがずれていたような気がする。
〔TOPICS 5〕 ウェステンドルフ 世界一豪華なFISレース
キッツビューエルSLの3日前、約20mほど離れたウェステンドルフではFISレースが行なわれる。種目はナイトスラローム。小さな町の小さなスキー場が舞台のこのレースは、しかし世界一豪華なメンバーが出場するFISレースとして知られている。キッツビューエルに向けて格好の調整の場になるので、ふだんはFISレースなどには出ることのないトップ選手たちが、こぞって出場するからだ。今季も多くの第1シードレーサーが大挙してエントリー。そんななか1番スタートは佐々木明。彼のゼッケンは2番だったのだが、ゼッケン1番のハインツ・シルヒェッガーが出走をとりやめたので突然の1番スタート。
「じゃあ、俺が盛り上げなきゃだめだな」と思った彼はいつにも増してアタックしたが、みごとに玉砕してしまった。レースはパランダーとシェーンフェルダーの争いとなり、結局パランダーの優勝。彼はその勢いのままキッツビューエルSLも制してしまった。
〔TOPICS 6〕 スクアドラ・アズーラ イタリアアルペンのルネッサンス
2年ほど前からすでにその兆しは見えていたが、イタリアチームの快進撃は、どうやら本物のようだ。ダヴィデ・シモンチェリがGSで初優勝し、マッシミリアーノ・ブラルドーネも初の表彰台
(2位) を獲得。ジョルジョ・ロッカはますます充実しているし、ダウンヒルでは引退も噂される大ベテラン、クリスチャン・ゲディーナに復活の気配が見えている。2年後に迎える自国開催のトリノ五輪に向けて強化は順調すぎるほど順調だ。来シーズンはボルミオで世界選手権が開催されるが、五輪の前年に世界選手権を招致するというのは、考えてみればこれまでにない大胆な発想。しかし、結果的にはこれが大成功と言えそうだ。
「チーム内で激しい競争があるから、一瞬も力を抜けないし、互いに大きな刺激を与え合っている」というのがブラルドーネの言葉だが、今の勢いが続くなら、70年代半ばに全盛を誇ったイタリア黄金時代の再来が実現する可能性は極めて高いだろう。 |