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02-03 Alpine W-CUP 取材レポート
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【2004年SJ1月号】
開幕戦 「冷たく、熱く燃えた氷河の戦い」
女子GS第1戦
男子GS第1戦
〔SJマンスリーウォッチ 1〕
佐々木明

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開幕戦
〔SJ MONTHLY WATCH 1〕 佐々木 明
 
GSブレイク前夜

 日本の男子としては、ただひとりワールドカップ開幕戦に出場した佐々木明は、1本目で途中棄権に終わった。2枚目の急斜面、中間計時地点まであとわずか、というところで雪面の波に叩かれ、はじき飛ばされたのだ。この日のスタート順は72番。通常のワールドカップよりもエントリー数が多かったために、FISポイントの良くない彼は、絶望的な数字のゼッケンを背負わなければならなかった。それでも、自らの絶好調を信じ、ワールドカップのGSではまだ経験していない2本目進出をねらってシーズン緒戦に臨んだ。

 しかし、スタートして間もなく、あまりに強引に突っ込みすぎて頭部が旗門にヒット。その衝撃でゴーグルが外れてしまった。動揺はなかったというものの、風圧で涙が出て、雪面の細かい表情を読み取れない。もともとアクロバティックなリカバリーが特徴の彼の滑りは、このアクシデント以後さらにスリリングさを増し、日の陰った急斜面の中ほどで、大暴れの末にコースを飛び出していった。
「スタート順のわりにはコースも荒れていなかったし、滑りも良かったと思う。みんな硬い硬いって言っていたけど、僕は全然そう感じなかったほど、エッジがよく噛んだ。だけど、何しろ波が見えなくて……。身体が飛ばされてから、あーっ、ここに波があったんだぁっていう感じだった」。レース後の彼は、悔しさが8割、手応えが2割という表情で、こう自分の滑りを振り返った。

日本選手はスラロームしかできない、というイメージをぶち破りたい

 GSに対する佐々木の取り組み方は、昨シーズンを境に大きく変化した。新しいチーム体制、とりわけ、チーフコーチのゲオルク・ヘルリゲルとの出会いが、彼をGSに目覚めさせた。それまで、
「GSにはあまり興味がない」 と言ってはばからなかった佐々木が、
「GSは本当におもしろい。今までGSだと思ってやっていたのは、実はGSではなかった」 と発言も大きく変貌。トレーニングでは全体の8割をGSに当てるという徹底ぶりで、この(彼にとっての)新種目に取り組むようになったのだ。今や、彼は次のようにも言っている。
「スラロームだけ速いというのでは、これまでの日本選手と変わらない。ヨーロッパの人たちは、日本選手はスラロームしかできないと思っているから、僕が何としてでもそのイメージをぶち破りたい」。

 こうした強気な発言の背景には、GSに対する佐々木の自信が見え隠れする。実際、彼の進歩は目ざましく、トレーニングでの滑りは、トップレーサーと比較しても、まったく見劣りはしない。たとえば昨シーズンは、ミヒャエル・フォン・グリュニゲン(現役最後となった昨シーズンを含め4回の種目別優勝を記録したGSの名手)と行なったタイムレースで7本中6本で勝っている。このときのフォン・グリュニゲンは、サンモリッツ世界選手権に向けたスキーテストも兼ねていて、彼本人の説明によれば「100%の本気ではなかった」という。だが、タイムレースに立ち会った伊東裕樹サービスマンは
「日本の若造に何本も負けるので、フォン・グリュニゲンも最後はムキになって滑っていた」 と証言する。結局、7本の中のベストタイムはフォン・グリュニゲンがとったものの、佐々木が百戦錬磨のGSチャンピオンを慌てさせたのは、まぎれもない事実である。

 また、今年の夏から秋にかけては、フィンランドチームと何度も合同トレーニングを行ない、タイムトライアルでカレ・パランダーと互角の勝負を展開した。パランダーは、昨シーズンのスラローム・チャンピオンだが、とくにシーズンの半ば以降GSにも意欲的に取り組んでおり、世界選手権で6位、ワールドカップ最終戦でも6位となるなど、この種目でも第1シード入りが目前のレベル。そのパランダーと勝ったり負けたりというのは、すなわち条件さえ良ければ、佐々木のGSがワールドカップでも充分通用するということである。思えば、この状況は昨年の彼のスラロームにきわめて良く似ている。昨年も開幕を直前に控え「トレーニングでは、佐々木のほうがオーストリアチームの第1シード選手よりも速かった」というニュースが関係者を興奮させていた。そして、65番スタートから2位入賞というウェンゲンの快挙。同じことが、GSでも起こる可能性はけっして小さくないだろう。

 問題は、実際のレースにおける遅いスタート順である。FISポイントの関係で、現時点で彼にトップレーサーと同じ条件が与えられることはない。しばらくの間、荒れたコースが大きな障害となって立ちふさがるだろう。加えて、体力面でもまだ未知数の部分がある。とくにGSではトレーニングと実戦のポールセットは、スケールや地形の複雑さにおいてかなり異なるからだ。したがって、
「昨年に比べても、さらに良いトレーニングができた」 という彼の体力が、ワールドカップの実戦レベルではたして通用するかという点も、重要なポイントとなるだろう。

 今季の佐々木は、おそらくGSレースへの出場数が増えるはずだ。そのなかで、一歩ずつ階段を上り、チャンスでは一気に勝負をかける。そんな戦略を、彼は描いている。
「GSでもウェンゲンのようなことが起こる可能性を信じ、つねにモチベーションを上げていく。そして巡ってきたチャンスは絶対に逃さず、たとえFISレースでも、誰か速い奴が出ていたら、そいつをぶっちぎって(ポイントを)とっちゃうくらい貪欲にやっていきたい」。そう語る彼にとってスラロームに続く、GSでのブレイクは、意外に近いのではないだろうか。

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