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| 名勝負の影には名コースあり。
ワールドカップには、数々のレースを演出してきた伝統的なコースがいくつもあります。
各種目ごとに代表的なコースを挙げて、その名コースたる所以を紹介します。
コースを知れば、レースをより楽しく観ることができますよ! |
| GS(ジャイアント・スラローム) |
| ■Alta Badia(アルタ・バディア)/イタリア |
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Gran Risa (グラン・リサ)
・スタート地点標高:1,871m
・ゴール地点標高:1,423m
・標高差:448m
・コース全長:1,255m
・平均斜度:36%
・最大/最少斜度:53%/16%
コース後半は緩斜面主体だが、前半から中盤にかけては青氷が露出する急斜面が待ち構える。かつてイタリアのダヴィデ・シモンチェリは、このコースでしか好成績を挙げられない不思議な選手だった |
その迫力と魅力を存分に感じることができるGSの聖地
イタリア・ドロミテ山脈の中心部に位置するアルタ・バディア。ワールドカップ初開催は1985年。ここ数年はスラロームとセットでスケジュールされることが多いが、長くGS競技専用の会場として知られ、GSの聖地とも称される名コースを持つ。そのコース名は“Gran Risa(グラン・リサ)”。特徴は、何よりもスタート直後から続く急斜面にある。人工降雪機によって硬く氷結した急斜面が、全コースの3分の2を占める。また、コース幅が広いところでも40mほどという狭さ。さらに、そのコースが幾度も急激に方向を変える。したがって、レーサーたちは左右の圧迫感を感じながら、いきなり左に右にとリズムが変わるポールセットに対応しなければいけないのだ。技術的な難易度は非常に高く、完走することもむずかしい。GSの聖地と言われる所以である。観客にとっても、GSのハイスピードターンの魅力と迫力を余すことなく堪能できる会場と言えるだろう。 |

■Adelboden (アデルボーデン) /スイス
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・スタート地点標高:1,730m
・ゴール地点標高:1,294m
・標高差:436m
・コース全長:1,430m
レース会場としての歴史は古く、ワールドカップ発足前の1956年からレースが開催されているクラシックな会場だ。コースの大半が右下がりの片斜面。加えて急激な斜面変化が、レースをおもしろく演出する |
複雑な斜面変化がレースを演出。 アルタ・バディアと並ぶ名コース
アルタ・バディアと並んでGSの名コースと謳われるのがアデルボーデン。スイスの昔ながらの牧歌的な風景を今に残す山村だが、そんな雰囲気とは裏腹に、レーサーたちにきわめて高い技術を要求するタフでハードなGSコースだ。アルタ・バディアはたびたび方向を変える急斜面があるものの、基本的には1枚バーン。それに対しアデルボーデンのGSコースの特徴は、複雑な地形変化。ヨーロッパにおける伝統的なコースの特徴でもあるが、ねじれやうねり、片斜面が連続し、絶えずフォールラインが変化する。必然的にポールセットもリズムが不規則な、テクニカルなものになる。しかも例年、極端に硬いアイスバーン。とくにゴール前の急斜面は横滑りもままならない危険地帯。ターンテクニックとパワーの両方が必要とされる難コースだ。2000年からはスラロームも開催されるようになり、ゴール直前の急斜面は、まさにこのコースのハイライトとしてレーサーを待ち受ける。 |
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| DH(ダウンヒル) |
■Kitzbuhel (キッツビューエル)/オーストリア
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Streif (シュトライフ )
・スタート地点標高:1,665m
・ゴール地点標高:805m
・標高差:860m
・コース全長:3,312m
・平均斜度:27%
・最大/最少斜度:85%/2%
このコース最大の見せ場は、ゴールからすべて見通すことができる。ダウンヒル開催日、ゴール付近は観客で埋まり、選手たちに大きな声援が飛ぶ |
もっとも危険で、もっともエキサイティングなダウンヒル
ワールドカップの3大クラシックレースのなかでも、もっとも多くの観客を集めるキッツビューエルのハーネンカム大会。その盛り上がりが最高潮に達するのがダウンヒル。“Streif(シュトライフ=すじ)”と名づけられたこのダウンヒルコースは、ワールドカップのなかでもっともテクニカルでむずかしく、危険で、そのぶんもっともエキサイティングなコースとして知られている。その見どころはコースのいたるところにある。スタート直後にいきなり崖のような急斜面から飛び出す大ジャンプ、“マウスファーレ”。それに続く、急斜面のS字ターン、“シュタイルハング”。そして、“ハウスベルグカンテ”の大ジャンプから高速斜滑降を経てゴール前へと、このコース最大の見せ場が続く。標準タイムは1分50秒前半。その間、気を抜くことができる箇所がほとんどない。テクニック、パワー、体力、経験、そして精神力と、レーサーにとってすべてが試される最強のダウンヒルコースだ。 |

■Wengen (ウェンゲン)/スイス
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・スタート地点標高:2,315m
・ゴール地点標高:1,290m
・標高差:1,025m
・コース全長:4,455m
・平均斜度:14.7°
・最大/最少斜度:42°/6°
ヨーロッパの名峰、アイガーをバックに高速ロングターンを描く。ウェンゲン・ダウンヒルの名所だ |
所要時間2分30秒を越える 超ロングダウンヒルの魅力
キッツビューエルのハーネンカム大会と並んで、長い歴史と伝統を誇るウェンゲンのラウバーホルン大会。この大会のハイライトもやはりダウンヒルだが、ただのダウンヒルではない。全長4,455m、標準で2分30秒前後のタイムを要する、FIS公認コースでは世界でもっとも長い距離を誇るダウンヒルコースなのだ。前半部は森林限界を超えたオープンコース。せり出した岩壁の間から飛び出す“フントショフ”のジャンプと、エアターンをともなった“ミンチカンテ”のジャンプがこの前半部の大きな山場で、観客にとっても一番の観戦スポットになっている。そこから登山電車の下をくぐる幅10mもないトンネルを抜けると、針葉樹林を切り開いた後半部に入っていく。ここは中・緩斜面が続く持久力勝負の区間。さらに体力が限界を迎えるゴール前に鋭角なS字カーブと大きなジャンプが待ち構えている。まさにダウンヒラーとしての本質が問われるコースと言えるだろう。 |

■Val Gardena (ヴァル・ガルディナ) /イタリア
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Saslong(サッソルンゴ)
・スタート地点標高:2,249m
・ゴール地点標高:1,410m
・標高差:839m
・コース全長:3,446m
・平均斜度:24.5%
・最大/最少斜度:56.9%/11.2%
サッソルンゴというコース名は、このコースの正面にそびえ立つ巨大な岩山からきている。高速ターンと大ジャンプが交互に繰り広げられる。見どころ満載のコースだ |
高速ダウンヒルの醍醐味が味わえるスリリングなコース
イタリア・ドロミテ山脈のなかでもコルチナ・ダンペッツォと並んで有名な会場として知られているヴァル・ガルディナ。そのダウンヒルコース、“Saslong(サッソルンゴ)”も、伝統ある名物コースだ。全コースを通じた平均時速は110kmにもおよび、加えて10カ所近いジャンプを飛ばなくてはいけない高速ダウンヒルが繰り広げられる。コース中盤には、“チャスラトーの草原”と呼ばれるテクニカルな区間もあり、スーパーG的な高速ターン技術が試される。だが、なんといっても有名なのは“キャメルジャンプ”。ラクダの背中のように連続してコブが3つ並んでいる区間だ。3つのコブをまとめて一気に飛ぶと、50mもの飛距離の大ジャンプになり、かつてはそんな果敢な戦略を取った猛者もいたが、現在では最初のふたつを一度のジャンプで越え、3つ目でもう一度飛ぶ戦法が主流。いずれにしても、コース全体で派手な空中戦を観ることができるスリリングなコースだ。 |
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| SL(スラローム) |
■Kitzbuhel (キッツビューエル)/オーストリア  |
Ganslern(ガンスレルン)
・スタート地点:991m
・ゴール地点標高:811m
・標高差:180m
・コース全長:560m 平均斜度:34%
・最大/最少斜度:70%/20%
急斜面はほとんどないため、ゴールからコース全体を見渡すことができる。2000年、皆川賢太郎がゼッケン60番から6位に入賞し、世界デビューを果たした |
優しい表情に隠れたいくつもの罠。 複雑な起伏に富んだコース
例年、キッツビューエルのハーネンカム大会の最後を飾るのがスラローム競技。ダウンヒルコース、“シュトライフ”のゴールから山に向かって右側、谷と林に囲まれた部分にキッツビューエルのスラロームコース、“Ganslern(ガンスレルン)”がある。一見、極端な急斜面はなく、穏やかな表情に見えるが、ダウンヒルコースと同様、ひと筋縄ではいかないむずかしさと偏屈さを秘めたコースだ。全体的に左下がりの片斜面になっていることに加え、夏は牧草地として使われていることから、うねりやねじれといった複雑な斜面変化が選手たちを待ち受ける。終盤には斜面を登るように滑る箇所もあり、けっして単純なリズムで滑ることはできない。必然的に、ポールセットもそうした地形変化をフルに活かしたものがセットされることが多く、そのポイントを的確に把握しないと攻略はむずかしい。そうした困難を克服して勝利をつかんだ選手が、大観衆に祝福されることができるのだ。 |

■Wengen (ウェンゲン)/スイス
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・スタート地点標高:1,475m
・ゴール地点標高:1,285m 標高差:190m
・コース全長:644m
・平均斜度:17.2°
・最大/最少斜度:36°/2°
佐々木明の世界デビューは、このウェンゲンだった。ゼッケン65番から2位に入賞。ゴール前の急斜面は、まさに観客の群れに向かって飛び込んでいくような感覚 |
硬く氷結した急斜面。 世界一むずかしいスラロームコース
1月のクラシックシリーズではウェンゲン、キッツビューエル、シュラドミングと伝統的なスラロームレースが3戦続く。スラローマーたちがシーズンのなかでもっとも力を注ぐ期間だ。ウェンゲンのスラロームはその初戦を飾るレース。そのスラロームコースは、キッツビューエルのそれとは対照的に、ひと目見てわかる急斜面が最大の特徴。しかも例年、そのほとんどが青氷で覆われている。横滑りも立っていることもままならない氷結した急斜面が、レーサーたちを苦しめる。さらに、クラシックコース特有の複雑な斜面変化も併せ持つ。キッツビューエルと同様、夏の間は放牧された牛がのんびりと草をついばむ牧草地として使われている自然の地形は、たとえ雪が降り積もったとしても、その複雑な変化やうねりを雪面に残す。それをクリアしたと思っても、さらに超絶の急斜面が待ち構える。ウェンゲンのスラロームコースが、世界で一番むずかしいと言われる所以である。 |

■Schladming (シュラドミング)/スイス
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Planai(プラナイ)
・スタート地点標高:958m
・ゴール地点標高:744m
・標高差:214m
・最大/最少斜度:52%/24%
照明に照らされたコースの脇は、仕事を終えて集まったアルペンファンが埋め尽くす。現在のワールドカップで、もっとも大きな盛り上がりを見せる会場と言える |
ナイトレースの美しさと スラロームの魅力を存分に味わえる
クラシックシリーズのスラローム3連戦の末尾を飾るシュラドミング恒例のナイタースラローム。平日の夜だというのに、仕事を終えたスキーファンが、群れを成して押し寄せる。ここ数年は5万人を超える観客が集まるという。スラロームではもっとも多くの観客を集める会場である。そのコース“Planai(プラナイ)”はスタート直後とゴール前に長い急斜面があり、それに中盤の中・緩斜面が挟まれたレイアウトになっている。ナイターレースということで、例年硬く氷結しており、レーサーたちはハードなレースを強いられる。だが、一方でウェンゲンやキッツビューエルとは異なり、コース幅も広く、うねりやねじれが少ないため、変化に富んだポールセットが可能。そういう意味では、スラローム競技のおもしろさ、魅力を純粋に楽しむことができるコースと言える。照明に照らされたナイタースラロームの美しさと、熱く熱狂するファンの姿だけでも、観戦する価値は充分だ。 |
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(2007年月刊スキージャーナル9月号より) |